一、テーマ: 異「言語」接触と『ミライ』
二、シンポジウムの趣旨
近年、AI技術の発展は目を見張るものがあり、そのことは将来の社会の様々な領域に大きな影響を及ぼすと予想されている。たとえば、AIによる翻訳能力の進歩により、外国語学習が不要なものになるのではないか、といわれることもある。もしそうなれば、教育界はこれまでにない変革に見舞われる可能性がある。もし言語学習が、たんに新たなコミュニケーションの道具を獲得する営みでしかないのであれば、AIの進歩によりその存在意義は大幅に縮小してしまいかねない。言語学習は存在意義を根底から問い直されることになるのである。
むろん、実際の高等教育の現場において、コミュニケーションの道具としての言語スキルの獲得が、まったく意味を失うことはないだろう。だが、言語学習の意義は、本来、それのみに限定されるものではないことも思い起こすべきである。
とくにポストモダン以降、言語とは、たんに人間主体の外部に切り離されて道具のように存在するものではないと考えられることが多い。言語は、自他認識やコミュニケーションのあり方、ひいては主体のあり方そのものをも決定する重要な要素であるとみなされる。であるならば、母語以外の言語を学習することの意義は、道具としての言語スキルの獲得のみにとどまらない。それまで知らなかった異なる論理体系や認識形態、コミュニケーションのあり方に接触し、またそれに関わってゆく過程そのものにも、言語学習の意味は存在するはずである。そうした過程を通じて学習者は、主体の変容を遂げてゆき、批判的・批評的な意識と視野もまた開拓することができるのである。AI時代の到来にあたって、これからの言語学習においては、他者の言語およびそれをとりまく文化との接触がひきおこす、こうした変容過程の意義をあらためて問い直すことが求められると考えられる。
こうした問題をとりあげるのは、過去・現在において高等教育機関での言語学習の現場において常に存在し、おそらく今後も存在し続けるであろう実際的問題について再考するためでもある。すなわち、大学等の高等教育機関で何らかの言語を学ぶ学生のうち少なからずは、卒業後にその言語を道具として十分に活用する職業に就くわけではない。そうした学習者のライフストーリーにおいて、高等教育機関における異言語接触とそれにともなう主体変容の体験は、どのような意味をもつのであろうか。また、教わる側だけでなく、教える側の人間には、どのような変容が発生するのだろうか。
さらに、文法・語彙等の習得といった狭義の意味での言語学習にとどまらず、通訳・翻訳活動や各種社会実践等において、他者の言語とかかわることは、当事者にとってどのような意味があるのだろうか。そうした行為をとおしても、人々は、異言語を通して異質な世界認識や人間関係、社会文化構造、価値観と出会い、多種多様な主体変容をとげてゆくはずである。
2023年度東海大学日本語言文化学系国際学術シンポジウム「異『言語』接触とミライ」は、こうした異言語接触と主体変容にまつわる諸問題を再考することで、言語教育の「ミライ」を考察しようとするものである。そのため、言語学や社会言語学、言語教育学、通訳・翻訳研究、インタビュー等、さまざまな角度からアプローチしたい。シンポジウムの会場では、テーマにおうじた講演と研究発表にくわえ、総合ディスカッションを開催し、これからの言語教育・言語学習について討論したい。さらに、言語学習の当事者(卒業生、教師)を囲んでのインタビューや相互討論の場を提供する。
なお、本シンポジウムにおいて、「言語」とは、単語、文法、会話技術など狭義の意味での言語のみを意味するものでなく、それをとりまく社会・文化的な脈絡を広く包含するものとしてみなす。狭義の意味での言語と、それをとりまく社会・文化的要因は、そもそも地続きとなっている。どこからを「言語」、どこまでを「文化」「社会」というように切り分けることは困難なのである。狭義の言語を学ぶことはそれをとりまく文化・社会を学ぶことにつながるし、逆もまた然りである。さらに、本シンポジウムでは「異言語」についても、狭義の意味での「外国語」のみでなく、「異なる意見」「異なる理念」といった、他者の言葉を広く包含する概念としてとらえてゆく。
本シンポジウムをとおし、異言語接触と主体変容の過去・現在・未来をめぐる考察が、より活発なものになってゆくことを願ってやまない。
三、本シンポジウムのプログラム構成は以下の通りです。
(一) 基調講演
(二) 研究発表
(三) パネルディスカッション
四、主 催:東海大学日本語言文化学系
五、会 場:東海大学茂榜廳
六、日 程:2023年3月18日(土 )
七、発表と申込:
- 使用言語:日本語
- 口頭発表時間:口頭発表20 分、総合質疑応答
- 申込方法:E-mail
「発表申し込み用紙」にご記入のうえ、メールで下記のアドレスまでお送りください。japan@thu.edu.tw
(メールのタイトル:2023 年国際シンポ要旨)。<こちらからの確認メールが届いたら受付完了です。> - 申込み期限: 2022年 9月 12日(月)必着
- 要旨の審査結果:2022年9月30日(金)までにメールで通知いたします。
- 予稿の締め切り:2023年2月15日(水)までに電子ファイル(PDF、WORD)で下記のアドレスまでお送りください。japan@thu.edu.tw(メールのタイトル:2023国際シンポ発表予稿)
八、予稿の書式及び提出方法は、下記をご参照ください。
- 本文の使用言語:日本語に限る。
- 論文の長さ:8~12 頁(参考文献・資料・図表などを含む)
- ページ規格:A4。横書き。1頁につき30 字×40 行。
- 余白:上5cm 下2.5cm 左3cm 右3cm
- 使用フォント:日本語-MS明朝体、中国語-MS新細明體、英語- Times New Roman
- 注記:脚注(MSワードの脚注機能をご使用ください)。
- 題目やお名前・所属は、以下の順序で書いてください(フォントの大きさは括弧内を参照)。
論文題目(14ポイント)
<一行空ける> 姓名(12ポイント)
所属機関と職称(12ポイント)
<一行空ける>
本文・参考文献(12ポイント)
(脚注は10ポイント)
九、お断りとお願い
提出いただいた発表資料の全文は会議論文集としてシンポジウム当日に刊行されます。お手数ですが、ご送付の前にご原稿の内容を十分に確認くださいますよう、お願いいたします。
また、本シンポジウム後、論文集の発行はいたしませんが、発表くださった皆様には本学科機関誌『多元文化交流』へのご投稿をお願いする予定です。その際、ご発表の内容をもとに加筆修正したご原稿をいただけましたら幸いです。
【問い合わせ先】
召 集 人 :主任 黃淑燕
電 話:04-2359-0121 分機31701~31703 (窓口:呂 佩芬 )
FAX :04-2359-0258
住 所:40704 台中市西屯區台灣大道四段1727 號 東海大學日本語言文化學系
E – M ai l :japan@thu.edu.tw