本修士課程では学生による、各地域にまたがるコミュニケーション交流(trans-regional interaction)の活動を企画・実践する能力の育成を重視しています。社会での実際の双方向的なプロジェクトは本課程の主軸となる特色です。その内容は実際の社会で双方向的に行われなければなりません。モデルや内容は教師が指導しますが、それぞれのプロジェクトが実際に行われるかどうかは、当該年度の学生がどのプロジェクトに参加するかによって決まります。内容は学生が自ら企画するので、毎年の活動内容は異なります。そのため以下に挙げるプロジェクトは例にすぎず、毎年かならず行われるとは限りません。
1. 山の歴史と交流プロジェクト (2012年~ )
山地原住民の正名運動が進行中ですが、正名に際しては伝統と歴史、また固有の文化など(古来の歴史)の証明が要求されます。台湾のアイデンティティの政治の中で翻弄される“山の人たち”の現代史―は、そうした動きの中で非常に軽んじられているのが現状です。2007年から、山の現代史を、山の人たちとの共同作業によって記録していきながら、山と平地のさまざまな交流を創出していくプロジェクトを行っています。
2. メディアプロジェクト(Media Project) (2012年~ )
メディアを中心としたさまざまな活動を通して恊働関係を築き、交流できる場を創出していくことを行っています。2007年から「ABONG 小さい家」をはじめ、「新魯冰花」の上映及び座談会の実施、また2009年には「地球で生きるために」というドキュメンタリー上映も実現しています。
3. 日台基層コミュニティ交流プロジェクト (2013年~ )
2007年から、日本と台湾で、それぞれ町づくりの活動を行っている人々の間の交流活動を促進し、共同で知見を積み上げ、共有しようとするプロジェクトを行っていました。
4. 東アジア歴史と人の移動プロジェクト 公式ブログ (2012年~ )
2007年から東アジアの冷戦後の歴史を、沖縄、フィリピン、韓国、台湾からどのように記述するかに関して同地域の学生たちで協力して考えながら、特に同地域間での人の移動―フィリピンから他地域への契約労働者の移動―に焦点をあて、彼らが移住先の地域コミュニティと十全な交流が図れるようにさまざまな活動を創出することを意図するプロジェクトを行っています。
5. 日本語世代と台湾地域社会プロジェクト (2012年~ )
2007年からは、台中県のある市における”日本語世代“の高齢者を中心とした日本語の自主講座を中心に、そこに集まる人々の思いや半生記を記録し、地域で共有しようというプロジェクトを行っています。ほかにもある地域の多言語状況―例えば商店街の言語表示、コミュニティ・センターでの使用言語などに関して多言語化する必要性とその具体的方法などについて関係者と協議しながら調整する活動への参与や、創出なども考えられます。
6. 東海×甲南日本語キャンププロジェクト
甲南日本語キャンプはもともと大学部の共同カリキュラムでした。日本の甲南大学は2002年から、「日本語教授法ⅠⅡ」を履修する学生による、台湾での教育実習活動をはじめました。東海大学の学部生はそのために、学内あるいは地域の人々の募集や、キャンプでのさまざまな事務処理を担当し、また教育実習期間は活動の補助もおこないます。学生は共同作業のなかで日本語のコミュニケーション能力を学習するのです。2021年に新型コロナの影響で教育実習はオンラインへ移行し、また甲南キャンプは修士課程のプロジェクトの一つとなりました。修士課程の学生は学部生と異なり、一般事務のほかに甲南の学生とともにキャンプ期間の教学活動を請け負います。日本の学生と同じようにカリキュラム設計の討論や学生フィードバックの対応を行うのです。このプロジェクトに参加する修士課程の学生は、事前に学部の「日語分科教学法」を履修しなければなりません。
7. ジェンダー問題について考えるプロジェクト
生活の中の不条理な問題の中には、社会での性的不平等に起因するものがあるかもしれません。本プロジェクトは身近な問題をきっかけに、社会が作り出す性的不平等の構造化問題を脱構築し、日常生活の中で感じる不愉快について考えます。具体的には、メディアやニュース、個人的な体験にあらわれるジェンダー問題について相互討論などを行います。人々が気楽に話し合える空間となるような小さなコミュニティーの創出から始め、ジェンダー問題の解決のための具体行動をおこすことを目標とします。
8. 台日社区交流プロジェクト
本活動は台湾、日本の社会課題について活動を通しながら理解を深めていくことを目標にしている。その活動の中で、台湾と日本の学生やコミュニティの人々とコミュニケーションを行い、ことばや文化、価値観などについて相互に学び合うことを目指す。活動は、日本人学生と混合グループを作り、大学内外で活動を実施する。春合宿は毎年2月か3月に台湾で、夏合宿は夏休みに日本で行う。
9. 宜蘭クレオールの記録・保存プロジェクト
消滅言語にも指定されている日本語由来の混合言語「宜蘭クレオール」使用地域(大同郷寒渓部落)において、フィールドワークや住民との交流やインタビューを通して言語や話者達の言語に対する思いを記録・保存するプロジェクトを行っています。