本修士課程のカリキュラムは、<台日言語コミュニケーション領域>(主軸1:日本語研究・主軸2:台日言語接触)<台日社会文化領域> (主軸1:台日表象文化・主軸2:台日社会交流)およびの二領域(4主軸)からなり、<交流プロジェクト>によって研究活動をまとめていくように設計されています。本修士課程を修了するためには、以下に説明する科目のうち、必修8単位+選択必修A群8単位+選択必修B群8単位 +選択必修C群4単位+修士論文6単位の合計34単位以上を履修し合格する必要があります。
日本語言研究史
極最近になって研究のための研究が認められるまでは、言語というものは多くの場合、その集団内部に言語研究を促す何らかの要因が存在するか、或いは外界との接触によってその必要性が生じるなど何らかの理由があって、始めて研究され始められるものであったし、また現代に至っても、「日本語」として研究するのか、「国語」として研究するかなど、さまざまな外的要因に取り囲まれてい ます。日本語という言語の研究はどのように始まり、どのように、どのような枠組みの中で研究されてきたのか、或いは日本人はどのように言語(日本語、外国語含む)を研究してきたのかなどの問題を中心に考えたいです。
日本語與語言使用
一言で「日本語」といっても、地域差、年齢差、男女差、階層差、状況差などによって、さまざまな変種が存在しています。そして、言語使用は対話者間の親疎・上下関係、伝える内容、目的、対話場面などといったさまざまな要因と絡まっており、バラエティーに富んでいます。また、日本語を使用している人は、日本に限らず世界各地にいます。この授業では、日本語の多様性に目を向け、実際に日本語がどこで何のためにどのように使われているかを考察していきます。そして、「日本語」でコミュニケーションする際にとるべき姿勢を考えていくヒントとして、従来のコミュニケーション研究を批判的に捉えていきます。
日本語與教育
現在、台湾において日本語教育が盛んに行われています。これは社会にどのような影響をもたらすのでしょうか。過去において、「日本語(国語)教育」は人々に何をもたらしたのでしょうか。日本において国語教育は何をもたらしたのでしょうか。その目的と手法はどのようなものであったのでしょうか。この授業では、こうした言語教育の歴史を踏まえながら日本語教育の目的と方法を検討します。そして言語が人間にとってもつ役割とは何か、その教育はいかにあるべきかを考えます。
近代語言形成史
「ドイツ語」「フランス語」「日本語」「中国語」・・・なぜ言語の多くは国の名前で名付けられているのでしょうか。一つの言語として認められるためにはどのような条件を揃えなければならないのでしょうか。近代言語は、どのような経緯を経て生まれてきたものでしょうか?その形成の過程には、常に言語あるいは言語変種間の差別化、話者集団の中心化と周縁化を伴っています。言語政策論(言語計画論)にも触れますがその枠組みにとらわれずに、近代言語編成の過程を「多言語の交渉過程」として丁寧にあと付けます。
語言接觸社會論
過去においては植民地支配、戦争に伴う移動、移民、現代においても国境を越えた経済活動、国際結婚など、人の移動に伴い言語の接触は社会に大きな影響をもたらしています。この授業では言語の接触がどのような歴史、社会文化的な要因で生まれ、その結果、どのような社会現象、言語現象をもたらしているのかを考察します。さらに、異なる言語話者間で、言語がどのように選択、評価され、そして調整していくのか、といった言語管理の問題を基本に、言語選択、言語の継承の問題、多分化共生に向けた言語政策を考えていきます。
翻譯文化論
「翻訳文化論」は、具体的な「翻訳・通訳」のテクニックを訓練するものではありません。「翻訳」とは何でしょうか?普通は、どの言語からどの言語に「翻訳」を行うのでしょうか?A言語からB言語に「翻訳」することは、どのようなことを意味しているのでしょうか?「翻訳」という行為はどのようにいろいろな地域の人や文化や思想に影響を与え、どのように支配してきたのでしょうか?この授業では、「翻訳の力」を考えていきたいと思います。
台日多元文化交流総論+台日多元文化交流実践論(2+2単位1年次):国民国家論、民族論の読みほぐしから文化、交流、それぞれの概念を歴史的に脱構築してゆくと同時に、人びと、言語、およびその他の文化的生産物の現実の接触と交流を分析的に見ていくための基本的なアプローチを導入します。
表象文化交流史
ものや事柄および人間を、わたしたちはどのように表象してきたのでしょうか。植民地時代(大規模な台日文化接触時代)を一つの基点として、それ以前、その後(現代にいたるまで)の台湾、日本、または東アジアの表象文化の歴史を概観すると同時に、各時代の表象文化について現在どう語っているのか(表象しているのか)を反省的・分析的にとらえ直 します。
表象交流生成論
台湾と日本で流通している文学、映像、音楽など多様な表象物を材料にし、「物語」の構造と機能の具体的な分析と理論的考察を行います。さらには、そこに表象される自/他の境界生成のされ方を論じ、さまざまな個人や集団が 自/他をどのように表象しているか、かつし得るか議論します。
媒體文化交流論
メディアを分析的にとらえるための理論的な議論を行う一方で、具体的に台湾や日本での種々のメディアの機構を実際に分析します。さまざまな文化情報を媒介するメディアが、どのような社会的力を生み出し、どのような公共空間を形成しているのか議論します。
公共空間形成史
日本、台湾 の「国民国家」形成、または「国民国家」内部の地域形成、さらには国境を越えた地域形成を、社会に存在する様々な多元的差異をダイナミックに包括していく過程として、歴史的に検証します。
移動與溝通
台湾と日本の経済的、文化的、社会的な活動は国境内部における場合から国境の越境まで、常に多元的な資本や物や人の移動によって成立しています(留学、観光、ビジネス、移住、移民など)。ここではそうした「移動」という営為がもたらす公共性の成立過程と、その変容の関係性について議論します。
政治與溝通
日本、台湾、日台の間、および東アジアの歴史と現状における諸国家間の交渉、国内政治議論から私的親密関係まで人びとのあいだのさまざまな事柄をめぐる議論・対立・抗争・協働・和解といった関係の形成とこれらの行為の言説化の諸過程を「政治」として捉えつつ研究・調査・議論し、具体的現場での交渉・調整等の「実践」も可能な限り試みていきます。